緑青の青みがかった鮮やかなグリーン色からイメージする印象は、人それぞれだとおもいます。
私は、古びたお寺の屋根を思い浮かべています。
歴史有るお寺の屋根が美しい緑色をしているのは、銅屋根の表面が長い時間をかけて変化し、銅の錆の一種である緑青に覆われている色だからです。緑青は見た目だけの美しさだけではありません。銅の表面で結びついて、屋根を腐食から保護する役割をはたしているそうです。また古来より天然の緑色の顔料として大変貴重に扱われてきたものでもあるそうで、古くから暮らしのなかで珍重されてきたのにもかかわらず、昭和の時代まで有毒なものとして扱われてきました。
そもそも、緑青が毒であるという考え方は、どこからきたかもはっきりしていないようです。しかし主な原因は、学校の教科書にあったようです。戦後の小学校の教科書「5年生の理科/金属の錆」には、「銅のさびの一種である緑青には毒性がある」と書かれています。また当時の百貨辞典にも、緑青は「有毒」と書かれています。ここで覚えた知識が長い間信じられてきたようです。しかし、教科書には緑青がなぜに有毒であるかについては、説明されてなく、緑青の毒性を証明する内容は書かれていないそうです。海外の文献にも緑青の毒性を訴えるものはなく、この誤解は日本だけの様です。
そこで、(社)日本銅センターが根拠のない誤解を解かんとして、東京大学医学部に依頼をして、緑青の動物実験を6年間にわたり行ったそうです。その結果、緑青は、無害同様の物質であることが確認されました。この報告を受けた厚生省も、1981年から国の研究として動物実験を行い、3年間にわたる研究の結果、緑青は「無害に等しい」との認定をだしたそうです。
1984年8月7日、NHK「朝のニュースワイド」で緑青猛毒説は誤ったものであることが厚生省の見解として報道されたとされています。全国紙の朝刊(朝日、毎日、読売)にも、このニュースが大々的にとりあげられたそです。
長い時間をかけて、ようやく緑青が無害であることは証明されました。その後教科書から緑青が有毒であるという内容は、削除されました。しかし、厚生省の発表から20年以上が経過した現在も、緑青は猛毒で恐ろしいという印象は完全になくなっていないようです。人々根深い意識が変わるには、さらに長い時間がかかりそうです。
2008
2008
こどもの頃、遊びに出かけて地べたに座ったとたん飛び上がるほど痛い経験があります。家に帰ってから確認すると、尻に小さいできものが出来ていた記憶があります。その度に祖母が塗ってくれた薬があります。年配のかたなら懐かしく感じるかたも多いかと思われます「たこの吸出し」です。昔からあるおできの薬「たこの吸出し(吸出し青膏)」は、現在でも販売されているロングセラーのくすりです。このユニークなネーミングのとおり、パッケージにはたこの絵がかかれています。中身は濃い緑色で、少し不気味な感じでですが、化膿したおできや腫れ物に塗ると、自然に膿を出してくれるのです。
この軟膏の不気味な緑色はなぜかご存知ですか。実はこの薬の成分に緑青が使用されていたそうです。銅が安全な事はもちろん、薬として私たちの生活を支えていたこともよくわかります。
※現在の薬は、緑青から硫酸銅に変わっています。
このように銅と医学の係わり合いは古くからあるそうで、薬や医療器具などさまざまな形で健康に関わり、支えてきということです。ここで医療の分野で活躍する銅を紹介しています。
漢方の分野には、古くから書物に伝わる沢山の薬があり、その治療には沢山の薬の中から症状に応じて適切な薬を処方するわけですが、その中に銅や緑青も使用されていました。漢方の有名な本草書「本草網目」によると「銅で薬になるのは赤銅である」「金と銅の合金は薬として最も秀でている」と書かれているそうで、銅が重要な薬として扱われていたことがうかがえます。漢方での緑青は、殺菌剤や止血剤などに、赤銅は風邪薬としてしようされていたようです。
はるか昔の古代エジプト時代、今から3000年も前から医療器具としてナイフ、ペンチ、ピンセットなどに銅が使用されていたようです。医療器具に銅が使われた理由は錆にくく、加工しやすい事と、銅の抗菌効果で器具が衛生的に保たれることも利点の一つであったでしょう。いま、医療器具の多くは手入れの簡単なステンレス製などに代わってきていますが、衛生的な環境を大切にした医療現場ですから、抗菌効果のある銅を見直す時がくるかもしれませんね。

